サクラドロップス

「安藤?」

アタシはキーボードの手を休める。

「アナタのことが、心配なんです。無理、しないで下さい。オレが変われる仕事は、変わりますから」

給湯室から出てきた安藤は、そう言うと帰り支度を始めた。

そして

「以上『半人前安藤の勝手に説教してみよう』のコーナーでした」

と、言って、軽く肩をすくめて見せる。

「安藤・・・?」

「生意気なのは百も承知で言ってますから。ノークレームでお願いシマス。じゃ、オレ帰りますネ?まだ8時回ったばっかだし、ツバサくん?も、いるし、今日はユキさん1人で大丈夫ですよネ?って、オレが一緒の方が危ないって話です」

「・・・」

アタシは、何も言えずに黙ってしまう。

すると安藤は。

「今日はそんなに資料残ってないみたいですけど」

と、資料の枚数を確かめる。そして続けて。

「ホント、頑張りすぎないで下さい。オレ大学4年の時、色々テンパッて、ストレスも重なって、肺気胸起こして救急車で運ばれたことがあるんです」

「気胸?」

「ええ。一度に3つ、肺に穴が空いて、死ぬかと思いました。空いた穴が大きくて手術することになって、さらに術後の経過が良くなくて・・・結局、一年留年しました。だからオレ、本当はユキさんと4つ違いなんです。今までカッコ悪くて、言えなかったんですけど」

クスクスと、まるで誰かの話を聞いているかのように、安藤は笑う。

けれど、アタシは・・・



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