サクラドロップス
「安藤、でも、アタシは頑張りたいの。もっともっと、仕事も、プライベートも、頑張りたいのよ。無理のし過ぎはやめたいけど、無理はしたいの」


あとから思えば

どうして安藤にこんなことを話したのかと思う。

けれどこの時アタシは、安藤の言葉で、自分が否定されてるような気がして

そう言わずに、いられなかったの。


すると安藤は、立ち上がってカラカラと椅子をしまいながら。


「そうですか。解りました。惚れた弱みです。ユキさんが頑張りたいなら、頑張り過ぎて倒れないように、側でオレが見守っています」

と、言って、クシャっと、右手で、アタシのほどかれた髪を撫でた。

「あん、どう?」

「今はまだ、もの足りないと思いますけど。でも、いつユキさんが倒れそうになっても、すぐに駆けつけて、支えられるように、オレが側で、見てますから。で、いつか、ユキさんが想っているオトコよりカッコイイスキル身につけて、惚れさせて見せますから。期待してて下さい」

「······ばかじゃないの?」

頭にのせられた安藤の手を払って。アタシ。

「アタシ、そんな簡単なオンナじゃないし」

「あ、それでこそユキさんです。安心しました。じゃ、オレ帰りますネ?ユキさんも気をつけて!」

と、言って

本当に安藤は帰って行った。


そして安藤の姿が見えなくなってから、序々に腹がたってきたアタシは···

「安藤!アイツ、ばかじゃないの?人がめずらしく素直になったからって調子にのって!!アタシがアンタに惚れる訳ないじゃないのよ。顔だって声だって性格だってイツキとは全然、全然違うのに!!!ムカツクムカツクムカツク---!!!」

と、文句を言いながら、キーボードをバチバチと叩きまくった·····


< 214 / 254 >

この作品をシェア

pagetop