サクラドロップス
そして怒りに任せて凄まじい勢いでデーター入力をすませたアタシは、無理しない程度に早歩きをして予定より1本はやい電車に乗り、可愛いサクラのもとへと急いだ。
するとサクラは予想通り寂しかったらしく、玄関で『オスワリ』のポーズのままで、アタシのことを待っていた。
「タダイマ、サクラ。ゴメンね、寂しかったよねぇ?」
アタシは玄関の鍵をしめてバッグを放り出すと、サクラを抱きしめてふわふわの背中を撫でる。鼻をくすぐる、やわらかなサクラの香り。
イツキがいない部屋には、サクラのコロコロと喉を鳴らす音だけが響き、照明さえ暗く、室温までもが冷たく感じる。
寂しい。
寂しい。
イツキに、逢いたい。
こうしてイツキのことを考えるだけで、アタシの瞳からはふるふると涙が零れる。
どう、頑張っても
そんなに簡単に、昨日と違う今日には順応出来ない。
イツキの透明な声が、イツキのやさしいぬくもりが、イツキの穏やかな笑顔が
ほしくて、ほしくてたまらない。
ねぇ、アタシ、今日も頑張れたかな?朝ちゃんと窓開けたの、見ててくれた?開けない窓からは、もう・・・卒業するね?お弁当もその内挑戦してみるから、上手く出来たら、ちゃんと誉めてネ?