サクラドロップス

-9-


それから一週間が過ぎ

アタシは毎日イツキを思って泣きながらも

少しずつ、イツキがアタシにしてくれたことを実行に移していた。


朝起きて、窓を開けて空気の入れ替えをして

身支度をすませてからお弁当を作る。

・・・お弁当作りって、夜に下準備をしておくと楽だったのネ。


なんとアタシはそれを、イツキが冷蔵庫の中に残しておいてくれた、お惣菜とその上のメモ書きで知り、今更ながらに実践中。

と、言っても今日は日曜日だから、パキラに霧吹きで水をあげてから、ベランダで日光浴を。

アタシではなく、もちろん、また新たに新芽を増やしたパキラのネ?

ベランダに出ると、一週間前よりも風は暖かくなり、大分春の陽気に近付いてきたようだ。

残念なことに眼下の桜の花はほぼ散ってしまったけれど

住宅街の花壇には可愛いチューリップたちが顔をほころばせはじめていた。


桜は散り、チューリップが笑顔になり

イツキが『生きてる』と言ったパキラはますます元気になり


日々は、確実に動き、イツキがいたことを『過去』にしようとしている。


でも


アタシの中にちゃんと、イツキは、いて。

イツキの教えてくれたことを守ることで

アタシは、彼と一緒に『今』を生きている。



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