サクラドロップス
「もーお、ココでイイってば。もうついて来ないでよ」
「いーえ、そんな訳には行きません。こんなに綺麗で美しくてスタイルもバッチなオレのユキさんが、危ないヤローに狙われたら大変ですから『ツバサくん』からも『ユキさんのことよろしく』って、あの日此処で頼まれてますし。彼が留学中の今、オレがユキさんを守らないでどうしますか」
「どうもしないわよ。大体アタシ、アンタのもんじゃないし!イツキは『そういう意味』で言ったんじゃないし!!!」
もう人もいない単線の駅のロータリーで、いい加減酔いの醒めたアタシと安藤。
「どうもしなくてもするんです。とにかくユキさんが部屋に入るの確認したら秒速で帰りますから。つーかユキさん、イツキって誰ですか?」
「イツキはイツキよ!安藤なんかに教えてあげないわよ。もうほんとにヤダ。今すぐ秒速で帰れ」
チラリと腕時計に目を走らせると、針は11時半を差していた。
アタシは、もう!と、言ってから、安藤を無視して歩き出す。
相手にしてらんない。
「・・・・・・」
「あ、ユキさん、そんなに急いだらまた足挫きますよー」
「・・・・・・」
「でも、もしもの時は任せて下さい。オレが抱えて部屋までエスコ-トしますので。お姫様だっこってヤツです。あ、それイイかも。サクラちゃんとも会えるし」
「・・・・・・」
「しまったなー、モモちゃんがだいすきな、ササミの燻製をサクラちゃんにももってくるべきでした。やっぱ第一印象って大事ですもんネ?あー、失敗した」
アタシの少し後ろを歩きながら、安藤。
アタシはイライラして。