サクラドロップス
「わぁ、綺麗!やっぱ髪とブーケとドレスと、ユキ姉のスタイルとのトータルバランスだよネ。カッコイイ。30代後半でこんなに美しくマーメードライン着こなす新婦なんていないよ」
鏡の前でブーケを合わせるアタシを見て、アユミ。
「ふふ、本当に綺麗。ツキにも、見せてあげたかったわねぇ」
そう言って母は、ガーゼのハンカチで涙を拭う。
アタシは・・・
「見てると思うよ、イツキは」
と、言って、控え室の窓から見える桜の木に、視線を移す。
「うん、お母さんもね、そう思って、だから、ユキちゃんのブーケ、フリージアにしたの。ツキのね、すきだった花」
「・・・そうだったの?」
と、アタシ。
ブーケに使われるフリージアを確認すると、広がる、春の香り。
「ツキ兄『春は桜とフリージアが綺麗で嬉しいよネ』って良く言ってたじゃん。ほんと、案外ユキ姉はツキ兄のこと『見て』ないんだよね」
・・・スミマセン。
綺麗な顔に夢中だったの・・・と、言ったら
許してくれる?
ねぇ、イツキ・・・?