サクラドロップス

「わぁ、綺麗!やっぱ髪とブーケとドレスと、ユキ姉のスタイルとのトータルバランスだよネ。カッコイイ。30代後半でこんなに美しくマーメードライン着こなす新婦なんていないよ」

鏡の前でブーケを合わせるアタシを見て、アユミ。

「ふふ、本当に綺麗。ツキにも、見せてあげたかったわねぇ」

そう言って母は、ガーゼのハンカチで涙を拭う。

アタシは・・・

「見てると思うよ、イツキは」

と、言って、控え室の窓から見える桜の木に、視線を移す。

「うん、お母さんもね、そう思って、だから、ユキちゃんのブーケ、フリージアにしたの。ツキのね、すきだった花」

「・・・そうだったの?」

と、アタシ。

ブーケに使われるフリージアを確認すると、広がる、春の香り。

「ツキ兄『春は桜とフリージアが綺麗で嬉しいよネ』って良く言ってたじゃん。ほんと、案外ユキ姉はツキ兄のこと『見て』ないんだよね」


・・・スミマセン。

綺麗な顔に夢中だったの・・・と、言ったら

許してくれる?


ねぇ、イツキ・・・?
< 231 / 254 >

この作品をシェア

pagetop