サクラドロップス
「もう春だし!!って言うか、どこからひっぱり出して来たのよ。随分久しく見てないわ。と、言うより見たくなかったわ。アタシの部屋に合わないから!アタシの理想はホテルみたいに必要最低限の物しか置かない部屋!!」
······コタツと、ご丁寧に昔懐かしい竹で編まれた丸かごに入った橙色のみかん。
「ん?外の収納スペース。今日管理人さんにノコギリを返しに行った時にサ。管理人さんの部屋にコタツがあってネ?お昼ご馳走になってた時に『コタツってイイですねぇ···』って話になって」
「みゃう」
ツバサくんの話に合いの手を入れるサクラ。
「そうしたら、管理人さんが『昔ユキちゃんの部屋にもあった筈だけどなぁ』って言って大型ゴミで頼まれた記憶ないから、収納庫に入ってるんじゃないかって。ビンゴだった♪」
「勝手に人んちの収納庫開けるな!」
変なもの入ってたらどうすんのヨ。
「生き別れの弟にそれはヒドイよ、お姉ちゃん」
「誰がお姉ちゃんよ!」
「まあまあ、立ったまんま怒んないで。手、洗ってうがいしたらコタツ入ってミカン食べて。遅くまでお疲れサマ。働く女子はビタミンとらなきゃネ。今、あったかいもの入れるし。梅昆布茶でイイ?」
「···うん」
またしてもツバサくんのペースで優しく背中をおされ、手とうがいをすませたアタシは、ヌクヌクとしたコタツの中に足を入れてしまった。
中には、満足そうな顔をしたサクラ。
まったく、もう···