神様に見捨てられた世界で生きる僕ら
夕陽で伸びた影、ふたつ...出逢い
この世に神様なんか存在しない。

だって、目に見えないもの。


*ちなみ視点


授業が終わった教室。

皆、それぞれの用事がある為か、あたしが籍を置く此処---2年7組はS.H.R終了後五分経つと無人の教室と化す。

それを良いことに、あたしは教室の窓から沈みゆく夕陽眺めるのだ。

あたし---八重ちなみは、自分で言うのも何だが人間付き合いが得意ではない。

表面上での、仲の良い人間ならばこの校舎内に数えられないほど居るのだが。

心を開く人間は、本の数人しか居ない。

大勢で騒ぐくらいならば、迷わずに独りを選ぶくらい。

大勢も好まず、人付き合いも好まない。

一応は隠し、校舎内では"イイコちゃん"を演じるあたしだが、それをずっと続けるのも、人間だから疲れるわけで。

こうして"イイコちゃん"で過ごした一日が終わるのを目で確かめたくて夕陽を眺める。


あともう一つ目的がある。

それは、




「ちなみ、みーっけ」

「圭、お疲れ様。早かったね。部活は終わったの?」




ガラッという、教室の扉が開く音と共に聞こえる幼馴染みの声。

彼、束縞圭は隣の家に住み、"本当"あたしを知る同い年の幼馴染み。

バスケ部に在籍する圭を待つのも日課だ。

小・中と、圭とは同じ学校だったためか、高校に上がった今でも登下校を共にしている。

どちらかが言い出し、約束した訳でもないのだが、二人の中では暗黙の了承だった。

臙脂色(えんじいろ)のスポーツバックを肩に掛け、窓辺にいたあたしに人懐っこい笑みを浮かべる圭が寄ってくる。




「今日はミーティングだけだからなー」

「そうだったんだ。お疲れ様、副部長さん」

「部長ったらひでぇンだぜ?!俺をコキ使ってよー!!」

「はいはい。帰り道で聞くよ」




地団駄を踏み、出来事を話し始めようとする圭をなだめ、帰宅を促す様に背を押し、教室を出る。

最後に、もう一度振り返り夕陽を見た。










何時も見ていた筈のそれは


何時もより


紅みを増している様な、気を残しながら教室を後にした






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