神様に見捨てられた世界で生きる僕ら
「なぁー、ちなみぃー」

「何?」

「何時まで猫被る気でいんの?」

「・・・さぁ?解らない」

「疲れねぇのか?」

「疲れるよ。でも人間関係で疲れるほどじゃないよ」

「・・・・・・そっか」

「どうかしたの、今更そんなこと聞いて」

「べっつにぃ!」


ふとした瞬間に訪れた沈黙の最中、圭がそんなことを聞いてきた。

今までに何度同じ事を聞かれただろうか。

その度に、あたしは同じ答えを何度伝えてきただろう。

そしてまた、その度に圭は何事もないように笑うのだ。


「ヘンな圭!」

「何だよ!でもちなみは笑った方が良いっ。
学校じゃ、空笑いだもんなー」

「・・・圭には解っちゃうんだね」

「当たり前だろ?何年隣に居ると思ってんだよ!」

「ふふ、生まれたときから一緒だもんね」


眩しいくらいの笑みで、圭は笑う。

物心が付いたときには既に隣に存在していたこの笑みに、あたしは自分でも知らない内に癒されていたのだろう。


「あ、今日も俺ン家で飯食ってくだろ?!
ちなみが来るとお袋も親父も喜ぶしよ!!」

「んー・・・じゃあお邪魔しようかな」

「そうこなくっちゃ!」




夕陽が反射する圭の笑顔に釣られ、あたしも自然と笑みが浮かぶ。

圭があたしを夕食に誘うのは、これが初めての事じゃない。

あたしの両親は父親の仕事の都合で海外に渡っている最中、飛行機事故でこの世を去った。

何かあったら、あたしを頼むって言うのを、以前から親交のあった圭の両親に残して。

だからこうして、圭を通して食事等の誘いがあるのだ。


「ついでに、今日の宿題の面倒も見てくれよ!」

「しょうがないなー・・・いいよ、見てあげる」

「さっすがちなみ様!!」


大袈裟に手を合わせて頼んでくる圭に苦笑いが浮かぶが、この光景も何度も経験したもので。

あたしも渋々といった感じだが、直ぐに了承してしまう。


「そうと決まれば、早く帰ろうぜ!!」

「でも家で着替えてから行くね」

「おぅ!!」
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