神様に見捨てられた世界で生きる僕ら
「初めまして、ちなみの遠縁に当たる八重千夜って言います」
「遠、縁?・・・ホントかちなみ・・・?」
「そ、そうなの!!つい、昨日の夜ね、泊まりに来たの!!」
まさか、"ペットです"なんて言えない。
冷や汗が滲むあたしとは裏腹に、千夜は胡散臭い笑みを浮かべながら、あたしの遠縁の親戚だと名乗った。
それを聞いた圭と一緒に、一瞬飛びそうになりながらも、口裏を合わせるために慌てて口を開いた。
「ちなみ、ちゃんと血縁者居たんだ・・・」
「うん、あたしも昨日初めて知らされて・・・驚いたよ」
「・・・仲、良いみたいだな」
「ぇ?」
「此、差し入れな。じゃ、おやすみ」
「ちょっと、圭?!」
何かを呟いたかと思うと、圭は一方的に話を終え、帰ってしまった。
千夜はそれを興味深そうに見ていたけど、あたしは首を傾げながら渡された差し入れと、帰って行った。
「なんなのさ、圭の馬鹿・・・」
「・・・彼に彼の思うことがあるんだって。ちなみ、そろそろ入らないと・・・幾ら夏だからって長時間外にいるのは良くない」
「・・・うん」
千夜に促されるまま家に入ろうとするが、
あたしの頭の中には何時までも、
圭の顔だけが残っていた。
この時のあたしは、
お互いがお互いだけだって言うのを忘れてしまっていて、
後に起こる、
たわいのない荒い事で大切なものを失うとも知らずに、
目を閉じて、闇に意識を沈めていた。