神様に見捨てられた世界で生きる僕ら
「ちなちゃん、ちなちゃん!!」
「あ、けーちゃん!!」
「これ、ちなちゃんにあげる!」
「わっ。こんなにお花もらっていーの!?」
「うん!ちなちゃんの為に取ってきたんだよ!!」
「ありがと、けーちゃん!・・・でも」
「ぇ?どうしたの、ちなちゃん?」
「けーちゃんが採ってきてくれたお花、嬉しいけど。
摘まれたお花、痛かっただろうなって。
そばに、パパやママが居たとしたら、可哀想だなって」
あの時の俺たちは、小学校に上がる、ずっと前。
川沿いに咲いていた、小さく色づいた幾種類かの花がちなみに似ていた所為か、俺は幼いながらに彼女にプレゼントしたのだ。
その花を見たときの、ちなみの嬉しそうな顔と言ったら。
其処にもう一輪、花が咲いたようだった。
だけど、次の瞬間には。
花を両手に携え見つめたまま、涙を浮かべてしまったのだ。
俺は訳が分からずに、オロオロとしてしまい、涙を浮かべていただろう。
大好きな大好きな、女の子に嫌われるのではないだろうかという、疑問を胸に抱えながら。
だが彼女が涙を浮かべた理由は、優しい彼女らしい、理由だった。
だから俺は、約束したのだ。
今度は咲いている場所に案内すると。
もう、花を採らないと。
彼女が笑顔になるのを期待して、約束したのだ。
すると彼女は案の定、笑顔で右手の小指を俺に差し出してきた。
後にも、先にも、彼の一度きりだったろう。
彼女---ちなみとした、指切りは。