Distance of LOVE☆
「あ…そうだ、和。
急に言っても…無理…だよね?
明日、仕事早退してくれ、なんて…」


「ゆづのためならなんとかするけど…
どうしたの?」


僕がそう言うと、ゆづがおずおずと母子手帳に挟んであった紙を差し出してきた。

一番目に付くところに、でかでかと


「両親学級のお知らせ」


と書いてあった。


両親学級って…

父親になる男性側も参加する講習、ってやつか。


「お産の準備と育児」か…


他人事じゃないもんな…


だって…頑張ってるゆづを何らかの形でサポートしてやりたいじゃん?

出産にも立ち会いたいし。

時間は…14時からとなっている。


幸い、明日の仕事量はそんなに多くない。


「わかった。
調整して、参加できるようにするから。」


「ありがとっ…///」


「これくらい、当然。
……いいから、少し寝てな?」


もうっ…すぐ子供扱いするんだから…なんて、拗ねながらベッドに横になるゆづ。


よし。
この隙に電話だ。


「あ…はい。
三ノ宮ですが…明日、14時から両親学級があるみたいで、その間だけ、抜けさせてもらえないでしょうか。」


『おー。
両親学級か。懐かしいな。まあ…お前も父親になるんだ、行ってこい。』


「ありがとうございます!」

『……おう。』


ふふっ。

プロデューサーさん、お礼言われると弱いんだよね。

さて。
僕は、TV電話越しに指導を受けてきますか。


TV電話とピアノのある部屋で、ウィーンにいる教授から指導を受ける。


『何だろう。
お前のピアノだからかな。音に深みがある。
…すごくいい。…俺が聞きたいくらいだよ。
音に深みを出す方法を。』

「楽しみなことを、思い浮かべながら弾いているだけです。
自分の中で、ボルテージが上がってくるんですよね。」


そう言うと、教授は、僕らしい理由だと、呆れたように笑った。

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