Distance of LOVE☆
分娩室前には、すでに職場の皆が来ていた。


「三ノ宮っ…!」


普段冷静なプロデューサーが血相を変えて声を掛けてきたから、吹き出しそうになった。

それを何とか堪える。


「無事なのか?
子供は?」


「無事…産まれたそうですよ。
悠月に似て可愛い女の子が。」


僕がそう言った瞬間、皆が肩の力を抜いて安堵の表情をしていた。


「おめでとう。
良かったな。
あ、そうだ。有名声優の谷村美月がアフレコのオファー受けてくれたぞ!」


「あ、ホントに!?ありがとう、さすがだよ。
僕1人じゃ、OKしてくれなかったと思うし。」


「いや…お前はイケると思う。
有名声優といえども、いつものスマイルで大抵の女はイチコロだろ…」


そんな話をしていると、主治医さんが分娩室から出てきた。


「彼女さん、無事に目覚めて体調も安定してますよ。赤ちゃんに会ってみますか?」


「ぜひ、お願いします。」


病室に入ると、すでにゆづが赤ちゃんを抱いていた。

「あ、和っ!!」


早く~と言わんばかりに僕を必死に手招きするゆづ。

可愛すぎる。


子供もだけど…


ゆづもね?


「パパだよ?」


僕がニッコリとスマイルを浮かべてそう言うと、さっきまでぐずっていた赤ちゃんが笑顔になった。


「さすがパパだよね~」


それに呼応するように、キャッキャッと笑う僕との可愛い赤ちゃん。


「あ、今日は残業あるんだ。」


「僕も…あと30分くらいしたら行くからさ、それまで少しの辛抱だよ!」


「いいから、お前は悠月ちゃんの側にいてやれって!」


同僚たちはそう言いながら、帰って行った。
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