Distance of LOVE☆
「んで?」       

僕は、行きつけのカフェに谷村さんを案内して、話を聞いてあげていた。

彼女は、男に振り回された過去があった。

好きだった幼なじみが学校一の美人と付き合い、谷村さんは前から告白されていた後輩と付き合った。  
部活が忙しくなり、会う機会が減ると、謝罪のメール1通のみを送って別れたという。

その後輩のことが好きだった同級生は彼女への妬みから学校の裏サイトに幼なじみのことも、その後輩のことも書いていたらしい。

当然のように、その幼なじみの人は谷村さんと会ってくれなくなり、メールも返ってこなくなったという。

3学期になって、幼なじみが県外の高校に行くことを知り、その時には既に彼女さんとも別れていたみたいだ。

せめて、自分のことを少しでも覚えていてほしい、と思い、バレンタインチョコを渡したという。
その彼は快く受け取ってくれたみたいだ。


ただ、卒業式の日に、谷村さんの同級生が幼なじみさんをSNSサイトで探して付き合い始めたらしい。


谷村さんはかなりのショックで、自殺も考えた。



その当時の幼なじみさんに、最近偶然会ったそうだ。

どうすべきか、悩んでいるらしい。


「んで?
じゃないですよ……」


「谷村さんは、僕にどうしてほしいワケ?」


「どうしてほしいって……会うにも連絡先知らないし、会うの何か気がひけるし。」


「じゃあ、会わなきゃいいんじゃない?」


「あの・・・でも……裏サイトの問題が解決しないと、会う決心もつかないし………」


ああ、何かこの子、相当参ってるな………

言ってること、支離滅裂だぞ?


「あ……あの………何とかしてもらえませんか?
裏サイトの問題……和之さん、優秀なプログラマーってウワサ、聞きますし……」


まあ、裏サイトにうまく入り込んで管理者になりすますか、裏サイトのプログラム自体を書き換えるかすれば大丈夫だと思う…………


「分かった。
何とかうまくやっておくよ。
とりあえず、先に店出てよ。会計は済ませてあるから。
一緒に出られるといろいろマズイからさ。」

僕がそう言うと、薬指の婚約指輪に目くばせしてから頷いた谷村さん。




この様子を、彼女に見られていたなんて気付きもしなかった。




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