Distance of LOVE☆
「和之さまと悠月さまは…この場にいてくださいませ。
…犠牲者が増えますので。」


「ぎ…犠牲者!?」


気になる単語が聞こえて、後を追うことを考えたが、止めた。

変にケガをしても、悠月や悠香が悲しむだけだ。

矢吹さんに任せよう。


そう思った数分後。


「矢吹…?矢吹っ!!
いゃあっ!!」
死んじゃ嫌ぁっ…!!


「落ち着けよ、姉さん…
まだ死んでねぇし…」


そんな単語が聞こえて…


「悠月と悠香はここにいろっ!!」


そう言って…僕も声のするほうへ走った。

駆け付けると、天野絵美が放心状態になっていた。


そして、その横には、腰辺りにナイフの刃が刺さった矢吹さんがいた。


「矢吹さん!?」


刺さっているのはほんの1、2cmだが、出血の量が多い。
これは異常だ。
まさか、ほとんどを血糊でカムフラージュしてるのか?


だが、矢吹さんの仕える彩お嬢様がひどく泣き叫んでいた。
鑑識なら…本物の血と血糊の区別自体付くはずじゃないか?


とにかく、担架に乗せて高沢さんのもとに運んだ。

治療の間、彩さんの弟から聞いた話。


彩さんは昔、自分の執事を事故で亡くしたそうだ。
それ以来、原因はともかくとして、
"執事を失うこと"
をかなり恐れているらしい。


だからだ。

だから…彩さんはあんなツンデレな態度をとっているのか。
手のかかるお嬢様という様に印象付けて、自分の執事が側を離れることがないようにしてるんだ。


…矢吹さん。


お嬢様が自分に恋愛感情を持っていないなんて、そんなこと、ないんだよ。
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