Distance of LOVE☆
政略結婚させられるのでございますよ。
彩さまは。
オーストリアのある財閥の御曹司と…。
ましてや、政略結婚ともなると、もはや旦那さまや奥様、彩お嬢様本人の意思すらも関係ないのでございます。」


「なんとかしてやりたいよな…姉さん。
納得いかないよな、親父もおふくろも。
自分の子供たちの幸せを何より望んでるし…」


ツラそうに、表情を歪ませる麗眞くん。

その表情は、見ているこっちまで、胸を苦しくさせた。


「ねぇねぇ、何とかしてあげられないかな。」


「何言ってるんだよ、ゆづ…
僕、ピアノとギターしか弾けないよ?」


「……!!
貴方さまは…三ノ宮 和之さまでいらっしゃいますか?
あの…オーストリアでもその近隣国でも有名であらせられる…
貴方さまがご一緒なのでしたら、あるいは。
政略結婚を、破談させられるかもしれません。」


「え…僕がそんなこと…できます?
ピアノてギターしか弾けないただのゲーム会社社員の僕が?」


「ええ。
非常にオーストリアの御曹司はミーハーでございますゆえ、貴方の大ファンなのですよ。」


「じゃあ…和の言うことなら聞く可能性ある、ってことよね?」


「じゃあ…オーストリア…今すぐにでも行ってほしいなら行くけど。」


「南、自家用ジェット機の手配を。」


相沢さんが、的確に指示する。


「国土交通省の許可を得ておりますゆえ、この場所から飛んで国を越えてもいいのでございます。
悠月さまはいかがなさいますか?」


悠月に問いかけてくる。


「私が付き添うことで判断が変わる場合もあるだろうから、付いていくよ。」


マジかよ…悠月、大丈夫?

「では、念のために優秀なチャイルドマインダーを同乗させますゆえ、ご安心を。」


数分後、オーストリアへ向けてヘリが飛び立った。
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