Distance of LOVE☆
「大丈夫でしょ?
麗眞くんのお姉さんだし。
いつでも冷静そうじゃん。」


「甘いよ、ゆづ。
ああいうタイプはね?
予想外のことが起きたとき、怖いんだから。
トラウマからなかなか抜け出せないタイプだね。」


「和っ!
麗眞くんの不安を助長させるようなこと、言っちゃダメでしょ?」


「あの…ごめん。」


「別に。和之さんの言ったこと、ホントだしね。
前の執事さんのこと、ホントに好きだったんだよ、姉さん。
だけど、あんな形で別れるなんて、想像つかなかっただろうね。
それ以来だよ。
執事さんとは必要最低限の会話しかしなくなったの。
好きになっちゃいけないって、自分にブレーキかけてるんだと思うんだよ。
…そんなことないってオレは何回も言ってるんだけど。」


そうなの?
あのお嬢様が…そんなこと?


「…相沢。
オレは何回も聞いたから、この2人に聞かせてやれ。」


「何?」


「オレと姉さんの、ある日の会話。」


相沢さんから渡されたヘッドホンの片方をゆづに渡してやる。


「姉さん…何でだよ…政略結婚だなんて…姉さんはそれでいいのかよ!
好きなんじゃないの?矢吹さんのこと。
姉さんが…こんな政略結婚で幸せになれるとは思わないけど?オレは。」


「何よ。
貴方がどう思おうが勝手だけどね?麗眞。」


「オレがせっかく心配してやってるのにその言い方はないだろ?」


「貴方、人の心配より自分の心配したら?
麗眞も、せっかくの縁談話が破談にならないよう、頑張ることね。」


「…っ!
好きなんだろ?矢吹さんのこと。」


「…好きで悪いのかしら?」


その音声の後、ドアを勢いよく閉める音が聞こえた。

これ以来、あのお嬢様の音声は拾えなかった。



「あの盗聴器で拾った音声はここまででございますので、こちらは回収させていただきます。」


手際よく、相沢さんが回収してくれた。


「情けないだろ?
オレ、姉さんからバッチリ本音を聞き出せると思ったんだけどな。」



「でも、最後のが本音じゃないの?」


「麗眞坊ちゃまには、さりげなく本音をおっしゃるのが彩さまですからね。」


「姉さん、今頃どうしてんだろ。」


やはり、シスコンだな、麗眞くんは。


「到着いたしましたよ?皆様がた。」


え?
もうウイーン到着?

早いなあ…


へりを降りると、豪華絢爛、という四文字熟語がバッチリ似合う、ホテルの屋上に着いたようだった。


「とりあえず、このホテルのレストランでディナーと致しましょう。
さらに、今宵はこのホテルにご宿泊いただきます。
例の御曹司を邸宅を訪問するのは、明日ということに…」


今は相沢さんの言うことに従っておくか。







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