Distance of LOVE☆
『近いうちにそっちに行くわ。
あと、他にもやることあるし。』
「………分かりました。
気を付けて。』
微かに、雅志の声と、トーンの低い女の人の声が聞こえる。
その声で、微かに目が開いた。
いつも見ている真っ白な天井。
今は消えているが、夜には一等星の星くらい明るいシャンデリア。
さすが、オーナーの彩さんが目をつけて私たちのためにって買い取ってくれた家だなぁ…………
「ごめん。
起こしちゃったかな……」
「そんなことないよ?今、ちょうど起きたところなの。」
「それならいいけど。」
不意に訪れる沈黙が嫌で、テレビを点けた。
オーナーの知り合いが頑張って、日本の番組も観れるようにしてくれたのよね。
たまたま回したチャンネルは、獣医師が主人公のドラマだった。
タイミングがいいのか悪いのか、オペのシーンで、思わず目を背けた。
このドラマ、昔はよく観てたのに。
雅志はちゃんと分かってくれているのか、すぐさまテレビのリモコンを操作して、違う番組に替えてくれた。
アイドルがいろいろなおもしろ実験を試みるという番組だった。
こちらのほうが、気持ちが落ち着いた。
そのとき、雅志の携帯電話が着信を告げた。
「はい。
何だか……獣医師ドラマ観て目を背けたりしていて……
………はい。分かりました。」
何だか、住所を書き取っているようだ。
「奈留に行かせます。
明日にでも。もちろんです。
わざわざありがとうございます。
オーナー。」
電話を切った雅志は、私のほうに向き直って言った。
「浮気相手かと思った?
そんなわけないでしょ。ね?奈留。
奈留しか好きになれないしね?」
そう言って、軽くキスをしてくれた。
唇の温度は、相変わらず、私の倍くらい温かかった。
「奈留、身体冷えてるんじゃない?
先に風呂入ってくれば?
ジャグジーあるみたいだし。」
「え?」
さっき、オーナーからちゃっかり聞いたらしい。
「すぐ冷えるからな、女って。」
そう言って、お湯の温度を1℃ほど上げてくれた。
体温計で測れるギリギリの温度、42℃の熱いシャワーを頭から浴びた。
今日の、昼間のあの出来事が走馬灯のように、脳内を駆け巡った。
熱いシャワーを、頭から浴びているはずなのに、南極にでもいるのかと思うくらい、身体に悪寒が走った。
シャワーの温度と同じ温度のお湯に浸かると、昼間のボーダーコリーの手術前の顔が頭に浮かんできて、頭を何度も何度も振って、その残像を追い出した。
……追い出しても、今度は私にクビを宣告したあの院長の顔が浮かんでくる。
耐え切れなくなってお湯から上がった。
オーナーオススメのボディーローションを湯上りの肌に塗ると、オーナーが、一人じゃないんだから、自信を持ちなさいな。
とでも言ってくれているようで、自然と笑みがこぼれた。
ほんの少しだけ、気持ちが穏やかになった気がした。
あと、他にもやることあるし。』
「………分かりました。
気を付けて。』
微かに、雅志の声と、トーンの低い女の人の声が聞こえる。
その声で、微かに目が開いた。
いつも見ている真っ白な天井。
今は消えているが、夜には一等星の星くらい明るいシャンデリア。
さすが、オーナーの彩さんが目をつけて私たちのためにって買い取ってくれた家だなぁ…………
「ごめん。
起こしちゃったかな……」
「そんなことないよ?今、ちょうど起きたところなの。」
「それならいいけど。」
不意に訪れる沈黙が嫌で、テレビを点けた。
オーナーの知り合いが頑張って、日本の番組も観れるようにしてくれたのよね。
たまたま回したチャンネルは、獣医師が主人公のドラマだった。
タイミングがいいのか悪いのか、オペのシーンで、思わず目を背けた。
このドラマ、昔はよく観てたのに。
雅志はちゃんと分かってくれているのか、すぐさまテレビのリモコンを操作して、違う番組に替えてくれた。
アイドルがいろいろなおもしろ実験を試みるという番組だった。
こちらのほうが、気持ちが落ち着いた。
そのとき、雅志の携帯電話が着信を告げた。
「はい。
何だか……獣医師ドラマ観て目を背けたりしていて……
………はい。分かりました。」
何だか、住所を書き取っているようだ。
「奈留に行かせます。
明日にでも。もちろんです。
わざわざありがとうございます。
オーナー。」
電話を切った雅志は、私のほうに向き直って言った。
「浮気相手かと思った?
そんなわけないでしょ。ね?奈留。
奈留しか好きになれないしね?」
そう言って、軽くキスをしてくれた。
唇の温度は、相変わらず、私の倍くらい温かかった。
「奈留、身体冷えてるんじゃない?
先に風呂入ってくれば?
ジャグジーあるみたいだし。」
「え?」
さっき、オーナーからちゃっかり聞いたらしい。
「すぐ冷えるからな、女って。」
そう言って、お湯の温度を1℃ほど上げてくれた。
体温計で測れるギリギリの温度、42℃の熱いシャワーを頭から浴びた。
今日の、昼間のあの出来事が走馬灯のように、脳内を駆け巡った。
熱いシャワーを、頭から浴びているはずなのに、南極にでもいるのかと思うくらい、身体に悪寒が走った。
シャワーの温度と同じ温度のお湯に浸かると、昼間のボーダーコリーの手術前の顔が頭に浮かんできて、頭を何度も何度も振って、その残像を追い出した。
……追い出しても、今度は私にクビを宣告したあの院長の顔が浮かんでくる。
耐え切れなくなってお湯から上がった。
オーナーオススメのボディーローションを湯上りの肌に塗ると、オーナーが、一人じゃないんだから、自信を持ちなさいな。
とでも言ってくれているようで、自然と笑みがこぼれた。
ほんの少しだけ、気持ちが穏やかになった気がした。