Distance of LOVE☆
「いい子にしてなって、言ったじゃん?
まあ、ピアノくらいならいいか。」


そう言いながら部屋に入ってきた和と、春香と3人で、レストランに行った。


だけど食べ物を見ると一気に食欲がなくなって、ご飯を茶碗一杯と、お味噌汁を少し飲んだだけでお腹が膨れた。


「悠月、もういいの?」


そう言う春香と和に、


「ダイエット中なんだよね。」


とだけ返して、部屋に戻った。


それから、治まりそうもない下腹部の痛みに耐えた。

どれくらいそうしていたんだろ。


「悠月、大丈夫?
チェックアウトだけど、歩ける?」


なんて、優しくしてくれる和。


和は私が抱っこして車に乗せてくれて、鞄はアルプスさんが持ってくれていた。

家に着くと、アルプスさんが持ってくれていた荷物はちゃんと和が持ってくれていた。


「僕はちょっと行くところがあるから、アルプスさんといい子にしてるんだよ?具合悪いなら無理して食べなくていいから、ちゃんと寝てなね?」


「ありがと…」


ホント、和は、優しすぎるのよ…


このときは…気づかなかった。

私のことに関しては特に、和のカンがいいってこと。


しばらくして、和が帰ってきた。


「どこ行ってたの…?
和…」


「ん?
親戚のとこ。
帰ってきたなら、顔だけは出しておこうかと思ってね。」


子犬みたいな可愛い顔でそう言われて、少し安心。


「じゃあな、パピー。
ちゃんと、気を付けてやれよ?」


「分かってる。
また、ウィーンでな。」


そんな会話。


やっぱり寂しくなって、和にぎゅっと抱きつく。


「やっぱり…行っちゃうんだね…」


今、ここで妊娠のことを話せば、和は日本に残ってくれるかもしれない。


だけど…

まだいるかも分からない、お腹の中の子供をダシに使うなんて、
可哀想すぎる。


「何でもないよ。
行ってきな?」


今の私の、精一杯の笑顔で言った。
< 19 / 167 >

この作品をシェア

pagetop