Distance of LOVE☆
それから数日。

つわりがひどい。

吐き気とダルさ。

何もする気になれなくて、ただベッドに横たわることしか出来ない。


ちゃんと食べなきゃダメだって分かってるのに、身体が重い。

ピンポーン…


玄関のチャイムが鳴る。

尋ねてきたのは、アルプスさんと春香と愛花。


でもすぐにその皆の顔が、白くボヤけて…

私は、駆け寄ってきたアルプスさんの腕に崩れ落ちるように倒れた。


だけど倒れる前に、和の顔が思い浮かんだ。


気が付くと、真っ白な天井。

周りにはブラウン管のTVなら花瓶しかない。

だけど、部屋の隅にはピアノが点在していた。


アルプスさんも春香も愛花も、泣きそうな顔してた。

「良かったー!
悠月、死にたい死にたいって言ってたんだよ?
あんた、どんな夢見てたのよ?」


「ほんとに。
私たち、皆ビックリしたんだから。」


その言葉を合図に、先生が入ってきた。


「悠月さん。
まともに食べていなかったみたいですね。
胎児も母胎も無事なのが不思議なくらいです。
今日から1週間、点滴です 。
それから、ヘモグロビンを増やす点滴も。
あなた、慢性的な貧血でしょ?」


結局、入院することになった。


入院して…2日目のこと。点滴を終えて、主治医の朱音さんが去って行った後…

なんだか急に寂しくなった。


「和っ…
会いたいよっ…」


こんなこと呟いても…来てくれるはずないのにね。


もう、私なんかに、愛想尽かしちゃったかな?


嫌な考えだけが頭を巡る。

「もう…
ちゃんとご飯食べて待ってて下さいね
って言ったばかりでこんなになって…
そういうところ…相変わらずですね?」


え……


「何で…こんなときに…
来るのよっ…
バカ和っ…」


私が一番愛している人は、有言実行の人でした。
< 22 / 167 >

この作品をシェア

pagetop