Distance of LOVE☆
そしてそれから俺は、仕事を探した。

朱音は音楽を聴くのが好きで、そのことに関するアンテナは特に敏感だ。

次にどんな歌手がブレイクするか…

朱音がこの人!と思った人が本当に巷で人気になる、ということも珍しくはなかった。


「朱音、産婦人科医じゃなくて、音楽プロモーターにでもなったら良かったんじゃない?」


「それは…星哉のほうが向いていると思うよ?
……私が分かるのは、曲の拍子とかリズムの良さとか、そんなことだけ。
歌詞の良さとかメロディーの美しさは、私の語彙力じゃ、十分に伝わらないの。
だけどね?

星哉なら…出来るはず。
何たって…新聞社でいい記事をたくさん書いてきたじゃない?
言葉の魅力を伝えるのは…星哉にしか出来ないと思うよ?」


朱音のこの言葉で、俺は音楽プロモーターの職を選んだ。


そして、ある日の夕方。

「bunyレコード」という名前の会社の正社員試験を受けたときの結果が、郵送されてきた。


「開けるよ?」


「う…うん。」


朱音が隣で生唾を飲み込む音とともに、
封を開けた。


目に飛び込んできたのは、
"採用"

の文字。

その単語の前に、"不"という字はなかった。


「朱音!!
やったよ!!」


「おめでとうっ!!
さすが、星哉ね!」


朱音と2人で、ぎゅっと抱き合った。
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