Distance of LOVE☆

意志

病室を出て、お母さんがいるであろうナースステーションに向かう。


すると。

ドンッ!!


「いったいっ…」


誰かに思いきり、ぶつかってしまった。


「ごめんなさい…大丈夫? って…奈留!?」


「……!
朱音さ…お母さんっ…」


「そんなに急いで…どうしたのよ。
もう…また流産したら困るのは貴女なんだから、
まだ安静にしていなさい?」


「あの…お母さんっ…
今、お父さんがお見舞いに来ててね、聞いたんだ…
お母さんも…1度流産したって。
お父さんに反対されても産みたくて、自殺しようとした、って…

だから…そんなことも知らないで簡単に中絶とか言って…
お母さん、どんな気持ちだったのかなって…
軽率なこと言って…ごめんなさいっ…」


「いいのよ。
そんなこと…
妊娠してたの…知らなかったんだものね。
戸惑ってたのよね…
私、母親なのに。
娘の気持ち…分かってあげられなくて…ごめんなさい。
殴ったりして…」


お母さんは、まだ少し赤くなっている私の頬を撫でながら言った。
さっき、殴られた場所だ。

「お母さんっ…
また…私…お腹の中に宿せるかな…
私と雅志の子供…
お母さんたちみたいに。」

「ふふ。
きっとね?
後で病室行こうかしら。
お父さん、来てるんでしょ?」


「うんっ…!」


病室に戻ると、雅志とお父さんに迎えられた。


「おかえり。」


「ただいまっ。」


「どうだった?
仲直りできたか?」


返事の代わりに、Vサインを返す。


「疲れたろ?
中絶手術の後って、お腹にも負担がかかるっていうし…
寝てな?奈留。」


私に布団をかけてくれる雅志。

その言葉に甘えて、しばらく寝ることにした。


「おやすみ、奈留。」


その言葉に頷くことも出来ないうちに、眠りに落ちた。


葦田 奈留side 〈終〉

NEXT…葦田 雅志side
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