Distance of LOVE☆
「バカね。
何のために私が近くの土地を買い取ってまで、この場所にジェット機を回したと思っているのよ。
他ならぬ…彼女の夫のために決まっているでしょ?
さっさと彼を乗せてきなさい。」


「……はいはい。」


院長も、相変わらず、オーナーには頭が上がらないらしい。

当然か。


病院の経営方針等はほとんど彼女の判断に任せているし…

何より、彼女は…

"山車の素"や"ヨロイ自動車"、"テレビ帝京"など、ありとあらゆる会社を傘下に持ち、政財界に多大なる影響を及ぼす、"宝月財閥"の当主、宝月蓮太郎の娘なのだ。

表向きは動物病院のオーナーだが、実は財閥の社長令嬢である。

その権力を…濫用するでもなく…的確なところで発揮するから、従業員からの信頼も厚いのだ。


院長から俺に、携帯が手渡される。


「早く乗りなさいな、
時間の無駄よ?」


「今ちゃんと乗りましたから大丈夫です。
…彩お嬢様専用機ですか?」


「そうだけど…何か文句あるかしら?
これでも…アメリカの大統領機と同じ機種を採用しているんだけど。
国土交通省の認可も受けているからこの場所からフランスに飛び立っても何の問題もないわ。
そうね…4時間もあれば到着するはずよ。
っていうか…その呼び方…やめてもらえないかしら?そう呼んでいいの…執事だけよ。」


「ふふ。
すみません。
では、また後ほど。
フランスで会いましょう。」


それだけを言って、俺は院長さんに携帯を返した。


「じゃあ…行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」


院長は、時間が出来たら私も行くよ。

と言ってくれた。


待ってろよ…奈留。




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