Distance of LOVE☆
「雅志さま?」


「んっ…?」


「もう…到着致しましたよ?
移動中、ずっと熟睡しておられましたので…
無理矢理起こすのもいかがなものかと思ったものですから…」


オーナーの執事さんだろうか。


遠慮がちに声を掛けてきて、機内食を差し出してくれた。


「すみません…」


「どうぞ、お気になさらず。

…お疲れでしょう。

獣医師の仕事も激務ですからね。」


「ええ。
……まぁ…」


オマール海老のソテーやらフォアグラやら…
この機内のどこでこんなものを作れるんだとツッコミたくなるようなメニューのものを食べ終えた後、

パスポートやら入国審査カードやらを持って、ジェット機を降りた。



無事に入国審査を終えると、全長5mはあろうかという車が目の前に停まった。


「……あら、意外に早かったわね?」


「オーナー…」


「矢吹。
ちょっと話をすることがあるから、
なるべくゆっくり運転してくれるかしら?」


「仰せのままに。
彩お嬢様。」


「俺だとツッコまれるのに、執事さんだと何も言わないんだな。」


「うるさいっ…//!
とにかく…
貴女の奥さん…おそらく…薄々は気付いていたんじゃないかしら?
…妊娠してる、ってこと。」


は…はい?


「妊娠検査薬を使った形跡も見られたし…
何しろ…
彼女の机の上に、これが見付かったわ。」


オーナーから差し出された紙には…


"中絶同意書"


と書かれていた。


奈留…


なぜ俺に…相談してくれなかったんだよ…


< 52 / 167 >

この作品をシェア

pagetop