Distance of LOVE☆
「雅志くん、だったかな?」

「あ、はい…」


いきなり、奈留の父親に声を掛けられた。


確か…奈留のお父さん…今は医師団、だっけ。

発展途上国の人たちの医療支援をする……


「実はね、さっき…最後の仕事を終えてきた。
君はもう…体力的にも…年齢的にも…
この仕事はもう出来ないだろう、って言われてね。
……仕事をするうちに、私のことを慕う若い看護師や医師も出てきてね…
その人たちと…病院を開設しようと思うんだ。」


「病院…ですか。」


「そう。
もし…雅志くん。
君のご両親にもしものことがあったときは…
その後任を…私にしてほしいんだ。」


え……


「君は、人より動物を相手にしたほうが合っている。人間のほうは…私に任せてくれないか?
それに…約束したんだろ?奈留と2人で…動物病院を開業する、って。
君に…奈留のことで迷惑をかけたお詫びでもある。
若い連中にも研修医など、何らかの形で仕事をさせるから…
今の夫婦2人での経営にはならないから…1人1人の負担も大幅に減るだろう。」

「星哉さん…
ありがとうございます。
星哉さんにここまでしてもらったからには、奈留と2人で…絶対に動物病院を開業します。」


2人で…握手を交わした。

「…ふう。
疲れたわ。
…無駄じゃなかったわね。病院近くの土地を買い取ったこと。
ねぇ?矢吹。
なにせ…好きに使えるわ。"葦田医院"を増築して、大きな病院にしてもいいわけだし。
あの部屋の少なさでは…医者の数が余るだけよ。」


「あの…オーナーは…何を…?」


どうやら、俺の両親に星哉さんのことを話し、病院は星哉さんが継ぐことを快諾したらしい。

建物の所有権は…何故か俺に移っていて…
しかも…"葦田医院"という名前だけは変えない、という条件付で…

いろいろな書類を作成していたらしかった。


「私は陰から指揮っていただけ。
やったのは…全て矢吹だから。
真面目ちゃんだからね?私の願いなら、何でも叶えてくれちゃうのよ。」


「ありがとうございます、オーナー。
それに…執事さん。」


俺、幸せものだなぁ…
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