Distance of LOVE☆
執事さんに携帯を返すと、ふと気になった。

奈留がこんな状態で、彼女が研修に行っている病院は大丈夫なのだろうか…


「雅志くん。
君はもう寝たほうがいい。…明日からも大変なんだろ?」


えっ…?

大変って…どういうこと?

「ふふ。
そうね。
寝たほうがいいわ。
何でも貴方…一度彼女がいる病院に行っているじゃない?
そのとき、病院の院長が貴方を気に入ったみたいで。彼女に何かあったときは…ぜひ彼に…なんて言っていたわ。
っということで。
頼むわね?
雅志くん。」


俺のさりげない疑問に見事に答えてくれたのは…オーナーだった。

ってことは…

彼女の容態が安定するまで…
奈留がいない穴を俺が埋める、ってこと?


「あっちの病院にも許可はもらっているわ。」


「じゃあ…そういうことなら…」


奈留。

お前の分まで…しっかりやるからな?


「やっぱ、さすがね。
その決断力。
…将来有望だわ。」


でも…寝るって言ったって…もう4時なんだけどな…

「寝ないよりはマシだ。」


そう言う星哉さん。


確かに…な。


明日から期間限定とはいえ、こっちで働くんだし…

頑張らないと!


ってことで、寝るか。


「あ、まだ寝てなかったの?

星哉も。」


ひょこりと顔を覗かせたのは、朱音さんだ。


「今日は他の患者もいないし、空きベッド使って寝ていいからね?」


「あ…ありがとうございます。」


俺がそう言って頭を下げると、朱音さんはニッコリ笑って、
星哉さんとともに部屋を出ていった。


「彩お嬢様。
そろそろお帰りになりませんと。
徹夜ということになりますと、健康にも悪影響を及ぼしかねませんっ!」


「そうね。
…貴方にしては、気の利いたこと言うじゃない?」


オーナーの執事さんは、俺に頭を下げてから、先に歩いている彼女の後を付いて行く。

俺も慌てて、その後ろ姿に礼をした。


何もかもが…順調に思えたんだ。


この時までは。

葦田 雅志side〈終〉

NEXT…三ノ宮 和之side
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