Distance of LOVE☆
「こんにちは。」


僕が挨拶すると、日本語にも興味があるらしいバイト仲間の人たちは、日本語で挨拶を交わしてくれる。
全員日本語学校に通った時期があったようで、簡単な会話くらいは出来る。
アルプスさんは…ドイツ語も英語もペラペラだから…普通に話せるんだけど。


…ダメだ。
あの手紙を読んでから、考え込んでばかりで…
力なく椅子に座り込んだり、ため息をつきながらソファーに寝転がったり…
を繰り返す。


「大丈夫?
パピー。」


肩に、手の重みと温かみを感じる。

「Don't worry,will.」


考え込んでいる僕を心配して声を掛けてくれたのは仲間の1人、ウィルソン。

名前の雰囲気と、いつもゲーム機「wil」の話をしているから、「ウィル」って呼んでる。


とりあえず、着替えてくることに。


っていっても、スーツっぽい服装なら何でもいいんだけどね。


スーツっぽいダブルのジャケットに、白Yシャツに紫チェックのネクタイ。
ネクタイに合わせて、ズボンも紫。
これで大丈夫。


「さすがパピー。
センスいいなあ。」


僕が着替え終わると、アルプスさんは決まってそう、声を掛けてくる。


「パピーが日本にいるとき働いていた会社、株式会社になったんだろ?」


そうなの?

と驚く皆に、いつの間に持っていたのか、アルプスさんが手紙を皆に見せた。


「行かないの?」


「でも、僕はこっちでの仕事がありますから。」


「カズ、行って来いよ。
日本にいるんだろ?
大事な大事な彼女さん。」

仲間の皆は、僕の大事な彼女、悠月のことをよく理解してくれている。


「カズは知らないだろうけど、この店の大部分の客は、カズの演奏を聴きに来ているんだぜ?
演奏会で上手く弾けないからって、落ち込むなよ。」

「日本で彼女さんからパワーもらって、また頑張れば大丈夫。」


皆の励ましにより、僕は、日本に一時帰国することを決めた。



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