Distance of LOVE☆
いや、予想は…してたけどさ…

まさか…これ…この会場から生中継されてたってこと?


「すみません…彼女には直前まで秘密にして…仲間内だけで計画を進めていたんです。
それをこんな…日本からの観光客から現地の人まで…いろんな人に祝ってもらえて…
彼女のことも帰国することも受け入れてもらえて…
本当に、彼女も…悠月も言っていたのですが、
僕たちは最高に恵まれていると…心から思います。」

何かそんなカッコイイことを言ったつもりもないのに、拍手を貰った。


何を言っても、関係ないのだろうな。

皆お酒入ってテンション上がっちゃってるし。


もちろん、演奏者の僕も、妊婦さんである悠月もお酒なんか一滴も飲んでないけどね。


ふと思い立ったこと。

僕が座るピアノの一番近くに、

よいしょ、と、椅子を1つ持ってくる。


この人のためにね、新しい曲作ってきたんだよ?

今から…彼女のためにね?
目の前で歌おうと思う。


さっきまで僕たちの話した言葉の英語訳なりが映っていたモニターには、


「もう1つ、サプライズはじめます!!」


の文字。


アルプスさんが用意したのだろう。


ご丁寧に英語訳までついている。


「ここ…座ってろ、ってこと?」


不安げな顔でそう尋ねる悠月に、頷いてから、
ゆっくりピアノの前に座る。


「今から、本当に…本当に世界で1番大切な悠月に、サプライズで唄を贈ります。悠月はね、寂しがり屋で照れ屋さんで…純粋で。
多分、母親になる本人が一番不安だと思う。
そんなときは…この曲で元気になってくれれば、って思います。
…聴いてください。
『ここにしかない歌』。」
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