Distance of LOVE☆

帰国

音楽祭が終わるや否や、そのまま労を労うパーティーとなった。


僕はコーヒーだけど、悠月はアイスティーで乾杯。


「ありがとう。
悠月ちゃんとパピーの機転で助かったよ。」


悠月の話によると、そのオーケストラは、たまたま観客として来ていたコンサートの最中、バンドメンバーの具合が悪くなったらしい。
そこで急きょ、春香ちゃんが会場にいた悠月を見つけて連れてきたという。


それ以来、産前休暇に入ったそのメンバーの代わりに数ヵ月、キーボード担当で活動していたみたい。


「大丈夫だったの?
それ…安定期の前だったんじゃ…」


「言ったでしょ?
私と和の子は天才だって。私がピアノ弾いてるときはね、つわりとか胎動とかないの。
ちゃんとお腹の中で静かに私の演奏、聴いてくれてるんだよ。」


「だな。」


母親である彼女がそう言うのだから、間違いない。


「アルプスさん…通訳、ありがとうございます。」


「言ったろ?
パピーとエンジェルちゃんのためなら、お安いご用さ。」


今、アルプスさんの口からさらっと意味深な言葉が…

エ…エンジェルちゃん?


「あの…アルプスさん?
エンジェルちゃんって…まさか…」


「そう。
仲間内だけでの、悠月ちゃんのあだ名。」


や…やっぱり…


「いいじゃん。
天使みたいに可愛いし、いるだけで場が和むんだよな~」


念のために、いいの?あんな呼ばれ方してるけど…
と、彼女に確認してみた。

「私はなんて呼ばれてもいいよ。」


なんて、天使のような笑顔で言う悠月。

この笑顔のおかげだな。

"エンジェルちゃん"なんて呼ばれるの。
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