Distance of LOVE☆
また数時間経った頃…2人で朝食を囲む。

暫しの間、この数日間の出来事に思いを馳せていた、ときだった。


「なーに、たそがれてんだよ。
まあ…そういうパピーもサマになっているけどさ。」

後ろから、そう声を掛けてきたのは、アルプスさんだった。
もうすっかり、酔いも覚めたみたいだ。


「アルプスさん、いろいろとお世話になりました。
しばらく帰らないですけど…僕のこと、忘れないでくださいよ?」


「忘れるかよ。
…あ、そうだ。
これ、持って行けよ。」


そう言いながら、僕に手渡してくれたのは、やけに重さのある紙袋。
中を見てみると、子供服やらおもちゃやらが、大量に入っていた。

あ、忘れてた。

そういえば…アルプスさん、バツイチなんだっけ。


「今はハンガリーに住んでるからさ、前の家内。
ちょっと頼んで、コンサートに来るついでに持ってきてもらったの。
娘が産まれる前、調子に乗って大量に買ったのに使わなかった品々を。
処分するのももったいなかったし、お前らの手間も省けるし…
何しろ、パピーたちのことだ、1人だけじゃ済まないだろうし?」


さりげなく…さりげなく冷やかしただろ!!

まあ、聞かなかったことにしよう。


ゆづには…あのとき…博物館の屋上にて撮った写真を渡していた。


「ありがとうございます!!」

なんて、お礼を言うゆづが可愛くて。


「じゃあ…頑張れよ。
たまに…手紙送るから。」

「…わかった。
待ってるから。」


「エンジェルちゃんも。
元気な赤ん坊、産むんだよ?」


そう言って、彼女を抱き寄せようとするアルプスさんの頭を軽く殴ると、僕にとって一番大事な女性の手を握り、空港へと足を進めた。
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