碧眼の天姫―刀の後継者


―グサァッ

「うっ…ぁ…………」


氷鬼はあたしの刀に貫かれた。


「まさか…お前に…殺される…とは…な……」


そう呟く氷鬼は何故か安心したような笑みを浮かべていた。


一瞬攻撃の手が止まった時、氷鬼はあたしの決意を知ったのだろう。


その瞳に動揺が見えた。



「全く…すごい…鬼…だな…」


氷鬼は穿かなげに笑いあたしを見つめた。


「お前に…迷いは…無いのか……?」


その問いにあたしは苦笑いを浮かべる。


迷い…そんなの……


「迷いまくり…よ……」


そう言って笑う。


何度も何度もこれで良かったのか迷う。


それでも………


「何かを犠牲にしなければ守れ無いモノもあるって…そう言い聞かせて刀を振るうのよ」



そうでなきゃ……
あたしは心までも鬼になれないから…


「そう…か…………。
お前は所詮…人…だな…」


「…あたしは…どちらにもなりきれないのかもしれない…ね…」


鬼となった今も……
人間の女としての幸せを望んでる。


いつかは捨てなければならない感情…



「綺麗事なんて言わない。あたしは犠牲を出しても救いたいモノがある。だから…迷っても、やっぱりこの道を逝くよ」



あたしの言葉に氷鬼は頷く。



「我の…屍を…乗り越えて鬼になれ……美琴…」



―サラサラサラ…



そんな呪いの言葉を残して氷鬼の体は消えていった。








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