碧眼の天姫―刀の後継者
「美琴…すまない……」
―ダンッ
そう言った瞬間、草助様は床に額をつけあたしに謝罪を述べた。
「そ、草助様!?」
表情一つ変えなかった草助様があたしに頭を下げてる。
「すまなかった!!!」
何度も何度も謝罪を述べた。
「草助様!!!お止めください!!草助様は悪くない!!」
草助様に駆け寄り背に手を沿える。
「私は、天姫となった時、どうして私なのかと何度も何度も苦しみました」
天姫に選ばれるのは天宮家にとって願ってもない栄誉。
それでも………
「私は天姫になれなかった事を悲しむ姉様達が不思議でならなかったんです」
戦の中で舞い散るだけの運命に、光なんてない。
絶望だけなのに…
「でも…絶望だけの世界にも、光はあった」
あたしの言葉に草助様は顔を上げる。
あたしの答えを待つように…
「大切な人を見つけました。生まれて初めて愛した人と出会えたんです」
普通の恋愛のように手を繋いで町を歩いたり、映画を見たり…
そんな恋人らしい事はできなかったけど…
想いすら……
伝えられなかったけど…
幸せだったから…
千年の傍にいられて幸せだったから…
「彼と出会えたこの世界、彼が生きるこの世界と未来を守りたい。やっと…戦う理由を見つけたんです」
だから後悔なんてしてない。これは願いだ。
「なら尚更、子孫を残すなど辛いだけよ。愛した男を想いながら他の男に抱かれるなど…」
「それでいいんです、愛した人に抱かれたら……」
愛した人になんて抱かれたら……
「ずっと傍にいたいって…二人で赤ちゃんを育てて、家族全員でっ……」
涙がぽろぽろと溢れてくる。
「幸せに暮らしたい、もっと生きていたいって…願っちゃいますっ…から…」
泣き笑いのように草助様に笑みを浮かべると、草助様に頭を撫でられた。
「…すまない。辛いのはお前だというのに…」
草助様は小さく笑う。
「美琴、礎となれ」
全てを捧げ、滅び逝け。
あたしは強く頷く。
迷いはない。
「捧げます…。全てを…」
何もかも…
この体、心さえも…
運命に、鬼に…………