碧眼の天姫―刀の後継者


「千年…」


気付いたらそう呟いていた。男はそれに気付き手を止める。


「想い人ですか?姫」


男の質問にあたしは答えない。この人に答える義理なんてない。


この想いはあたしだけのものだ。


誰にも触れさせない。
たとえあなた以外の誰かに体を許しても………


想いだけはあなたにあげるよ………



千年……………



―ガタンッ


「「!!!!!!」」


ものすごい物音にあたし達は動きを止める。


なにやら外が騒がしい。


「何の…音……?」


あたしは着物を手繰り寄せる。


「様子がおかしい、一体何が………」



―シタンッ


男が言いかけた途端、あたし達の部屋の扉が開け放たれた。


「きゃっ……」


慌てて体を隠す。
そこには……………


「美琴……………」


月光を背に、赤茶色の髪が夜風に揺れていた。


ま…さか…………



「千…年……?」


ここにいるはずない…
何かの見間違え?


あたしの夢か幻なの?



「美琴っ!!!!!!」

―ガバッ

「っ!!!!」


一瞬で抱きしめられた。
この温もりや匂い…


あなたは………



「千年っ……」


大好きな千年だった。
迷わずに千年の背に手を回す。


その胸で声を上げて泣いた。


本当は怖かった。
千年の傍にいたかった…


想いだけじゃ足りなくて、もっともっとって願ってた。



もうこんなに千年から離れられなくなってる…












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