碧眼の天姫―刀の後継者
「俺は望んで力をもらったんだよ、誰のせいでもなく、俺自身の意志で…」
千年自身の意志………
でもそれだって結局…
「あたしを助ける為だったじゃない…。それならあたしの…」
「俺の話、最後まで聞いて」
牽制され、あたしは黙り込む。
「俺は…。美琴を愛してる」
「…っ!!!」
あたしを愛してるなんて…
お願いだから言わないでよ…
死ぬのが辛くなる。
あたしは…死んじゃうのに…
「だからこそ、美琴が犠牲になって死ぬなんて許せなかったよ。ましてや他の男に抱かれるなんて論外!」
キッと睨まれて、肩を竦めた。
いたたまれなく、着物をさらに胸元に手繰り寄せた。
「俺、怒ってるんだよ?美琴の初めては俺のなのに…」
「っ………」
千年はあたしの耳元でそう呟いた。
あたしだって…
初めてはあんたにあげたい。
でも…仕方ないじゃん…
あたしに選択肢なんて…
「天姫とか、特別の力とか関係なく、美琴は俺の大切な人にかわりないから…。大切な人を守る為なら、世界なんて滅びようが消えようが知ったこっちゃないね」
知ったこっちゃないって…
なんだか千年らしい。
周りなんて気にしないで、強欲て腹黒な人……
「俺は美琴を幸せにしたい、それが俺の願いで幸せなの。遠ざけられて、美琴の命と引き換えに生きながらえるなんて…俺は不幸だよ」
あたしの存在が、千年を幸せに出来るの?
それって…………
「誓って、美琴。…傍にいて、絶対に離れないって」
千年はあたしの手をとり甲に口づけた。
「あたし……は………」
あたしの言葉を千年はじっと待つ。
望んでいいの…?
あなたと生きる世界……
何があっても傍にいられる時間。
あなたと築く幸せ……
「千年…千年に戦う世界に生きろと言ってもあたしは……」
傍にいていいの?
「俺はもうとっくに覚悟を決めてるよ…」
千年は優しく笑いかけた。その笑顔に涙が出そうになる。
いや…………
もう出てたのかもしれない。
だって…………
頬がひやっとする。
「あたしは………」
あたしも…………
言ってしまってもいい?
あなたに対する想い。
あなたにしか叶えられない願い。
「あたしも…千年が好き。一緒にっ…いたいっ…」
涙が邪魔してなかなか声が出ない。
それでも伝えた。
その事に後悔してないと言えば嘘になるけど……
「違うでしょ、美琴…」
「…え……?」
首を傾げると、千年はあたしの額と瞼に口づけた。
「俺と"いたい"、じゃなくて、"いる"でしょ?」
悪戯な笑みを浮かべる千年に、あたしは笑う。
「千年の傍にいる。嘘偽りなく、あんたの傍に」
そう言ってあたし達は唇を重ねた。