碧眼の天姫―刀の後継者


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「千年、早く逃げないと」

「残念、もうちょっと食べたかったな」


「食べたかったって…」


あたしは食べものじゃないっての。


それにしても………


「あの人、いなくなっちゃったね」

「俺が入った時に飛び出してったよ。気づかなかった?」


うんと頷くと、千年はニヤッと笑う。


「それだけ俺を見つめててくれたって事だよね?」

「はあぁ?」


―バキッ


「うぇっ」



調子乗んなと千年の頭にチョップを落とす。


「痛いよ美琴!!!」


涙目で頭をさする千年にあたしは不敵な笑みを浮かべた。


「千年が悪いんだからね」

「ツンデレ?」


―バキッ


「痛〜っ!!!」


ふざける千年にもう一発お見舞いし、あたしは立ち上がる。


着物を簡単に直し刀を手にとった。


「千年」


あたしは千年に背を向けたまま声をかける。


「なーに?」

「白蓮様が来る」


さっきから気配がしてた。騒ぎを聞いての事だろう。


言い逃れはできない。



「まだ逃げられる、俺達なら…」

「逃げてるだけじゃ駄目、ちゃんと伝えなきゃ」


千年と生きる事。
犠牲を望まない。


天姫にも自由を………










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