碧眼の天姫―刀の後継者
第五章. 鬼
オモイノキオク
あれから数週間。
火鬼の封印は脆いものの、平穏が続いていた。
千年のマンションのベランダから風を感じる。
ここから見る鬼葬島の町並みは、すごく綺麗だ。
綺麗だけど………
「まさか、鬼が一体も現れないなんて…」
前までは、鬼が現れない夜なんて一夜もなかったのに…
嵐の前の静けさ…ともいうのだろうか。
『美琴…』
あぁ…天鬼…
心配かけた?
『…不安そうだな』
そりゃそうでしょ。
本来望むはずのこの平穏こそが恐ろしくて仕方ない。
『だが…お前には千年がいる。今まだかつて、天姫と誰かが共に戦った歴史は無い。現時代の天姫であるお前は一人ではない』
…ん。
そうだね、あたしは一人じゃない。
「でも……。時々不安になる」
この戦いで、生き残った天姫は一人もいない。
故に激しい戦いになる。
戦い慣れをしているあたしに比べて、千年には実戦経験がない。
「生きていられる保障なんて…あたしにも、千年にもないんだ…」
もし千年が死んだら?
そう考えるだけで胸が痛む。
呼吸さえ出来なくなるくらいに苦しくなる。
それは、千年も同じだと思うから…