【短編涼話】 十物語
「怖いっていうか・・」

更に瞳を捕らえるとフイッと視線を反らした。

その反応が僕を余計意地悪にさせる。

「美月は?」

「行く行く。今日の放課後は?」

好奇心旺盛の美月は顔を輝かせた。

美月に片思い中の圭に異存はなく、由宇も渋々頷いた。

ささいな悪戯心だった。

一喜一憂する圭や、由宇の可愛い動揺が見たい、ただそれだけだったんだ。

ザァアアア――――――

日が落ちた旧校舎裏で、冷たい風が桜を揺らした。

「雰囲気あるね。」

「周りのせいじゃね?木造校舎だし、人気ねーし。」

由宇が両腕をぎゅっと組み、肩を震わせた。

「暗いな。」

「月も出てないからね。」

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