【短編涼話】 十物語
灯りの届かない、暗い裏庭を歩いてく。

荒れた庭と風の音がますます心を逸らせた。

時折あがる女の子たちの悲鳴。

しがみついてくる美月の感触。

圭は先頭、僕は震える由宇の後ろについて歩いた。

目的の桜は焼却炉の手前にあった。

「なんだ、普通じゃん。」

圭が言い、美月がホッと息をつく。

「焼却炉の手前ってのが不気味。」

「まぁ、噂なんてこんなもんじゃん・・なぁ由宇?」

さっきから一言もしゃべらない由宇の肩に触れた。

さすがに意地悪しすぎたかな。

「由宇?」



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