【短編涼話】 十物語
「イヤーーーーーーーッ」

由宇が蒼ざめた顔で悲鳴を上げた。

震えるまなざしの向こうには、桜。

暗闇の中でぼんやりと、怪しく光った桜。

「何、何、どうなってんの?!」

ブワッ!!!

いつの間にかやんでいた風が、桜の方から突風となって僕たちを襲った。

「う、ワァッ!」

圭が頭を押さえて倒れた。

美月がガクンとひざまずき、由宇はその場にしゃがみこんだ。

僕だけがただ一人、訳も分からず立ち尽くす。

「何だよ、みんな、どうしたんだよ?!」
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