優しい涙
「ねぇ、A7。秋になったら次は冬だね」


ジジジ…

「フユ、デスカ」

A7が手を休めずに首をひねった。

確か、去年A7は冬の間ずっと充電室に閉じこもっていた。


「今年は何か仕事を見つけようか」

「シゴト?」

A7は草むしり以外を自分の仕事と思っていないのか、雑草を見つめながら腑に落ちない顔をしている。


「何だっていいよ。床みがきでも、庭掃除でも」


ジジジ…ジジジ…

考えているのか、理解不能なのか…

A7は首をひねったり回したり、うなづいてみたりを繰り返している。


「僕が教えるから」

そう告げると「ハイ」と答え、また草むしりを続けた。


僕はA7が草むしりに没頭する姿を見届けると、藤波様の書斎へ向かった。


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