優しい涙
藤波様の書斎の前で僕は大きく深呼吸をした。


途中、屋敷の人と何度かすれ違った。

僕を見ないように通り過ぎようとする人もいれば、睨みつけてくる人もいる。


あの夜、藤波様が屋敷中の人達に僕のことを説明した。


『聞く気がない者は退室しても構わない』と告げ、僕やA7、アンドロイドとのこれから生活について長く、長く話した。


最後まで聞いた人も何人かいた。


あれから、話しかけてくれたり挨拶をしてくれる人が増えた。

僕はその人達に、きちんと挨拶をし、自分の気持ちを出来るだけわかりやすく伝えるように努力をしている。


そうすることが、少しでも藤波様の役に立つことにつながるなら、僕は精一杯頑張るつもりでいる。


僕は大きくうなづいて


コン、コン…


藤波様の書斎をノックした。



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