優しい涙
「ユイくん、今日は大事なお客様がいらっしゃる日だから、藤波様の応接間を掃除してもらえる?」


「はい、わかりました」

ジジジ…


僕はバケツと雑巾を持ち、A7と藤波様の部屋にやってきた。


よし、綺麗にするぞ。


張り切って腕まくりをすると

「ユイくーん、ちょっとこっちに来てくれないか?」


遠くの方でまた名前を呼ばれた。

「どうしよ…」


僕とA7が応接間の前で困っていると

「おや、今日はやけに名前を呼ばれるね」


扉が開き、藤波様が顔を出した。

「どれ、では私がA7と先に応接間の掃除をしていよう」


「そんな!藤波様は仕事が…」

「来客までまだ時間があるから大丈夫だよ。A7に雑巾のしぼり方を教えておこう」


藤波様が楽しげにA7と応接間に入って行ったので、僕は一礼して、呼ばれていた方へ急いだ。



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