優しい涙
A7と僕はつま先から頭のてっぺんまでびしょ濡れになった。


二人とも髪の毛は強風であおられ鳥の巣が爆発したみたいになっている。


僕はともかく、A7はすぐに乾かさないと。


関節の間から雨が入り込んだら体内の中枢にあるメインコンピュータがさびてしまう。


僕は上着を脱いでしぼり上げ、A7を拭いてやった。


「まったく、世話がやけるんだから」

少しでもA7の水分をとろうと僕が必死になっていると


「カワイイ」


A7が僕の髪の毛をなでた。


は…?

なにが?


僕がA7を見る前に彼女が僕の頬を両手で挟み込み


「アナタ、カワイイ」

透き通ったガラス玉の目でのぞき込んできた。


僕はA7の手を軽く払いのけ、またA7をふく作業を続けた。
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