優しい涙
正直いって、複雑な気分だった。

A7に好かれて悪い気はしない。

むしろ、ほっとする。

くたびれいても子守型アンドロイドとしての包容力はあるみたいだ。


でも僕も「男」なんだし、可愛いという表現では素直に喜べない。


実家では父さんや母さんが「おまえは、可愛いこだ」とよく言ってくれたけど。


親に言われるのと、他人に言われるのとでは、受け取り方が全然ちがう。



いつまでたってもガラガラに痩せた体。


伸びない身長。


男子の短髪とはいえない、長めの髪の毛。


たまに、鏡に映る自分の姿が女の子に見えて本気で落ち込む。


もっと立派ながっしりした体格だったらよかったのに…


背丈もみんなが見上げるほど高く、腕や足にかっこいい筋肉がついていて。


そしたら藤波様のボディーガードくらい簡単に出来たかもしれないのに


A7に「カワイイ」と言われるたび、僕は結局、自分の情けなさにぶちあたることになる。
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