優しい涙
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「おい」
藤波様の声だ。
「起きれるか?」
「…は、はい…」
藤波様のとっさの呼び掛けに、反射的に返事はしたが…
体が、なかなか起き上がらない。
A7のぶちぶちと草をむしる音を聞きながら、いつの間にか
ウトウトしていたらしい。
眠ったつもりはないのに、いつの間にか空は真っ暗だ。
日が暮れている。
僕はあまり眠ることには興味がないのだけど、たまに考えごとをし過ぎると知らないうちに時間がたっていることがある。
毛布がかけられていることにも気がつかなかった。
毛布には土や草がついている。
きっとA7がかけていったに違いない。
「あの、すみません…A7は…?」
A7の管理は僕に任せられているのに、これではどっちが面倒みているのかわからない。
「A7は私が充電しておいたよ。今日は朝からよく働いていたからね」
「すみません…」
藤波様の顔をまっすぐに見ることが出来ない。
僕は本当に役立たずだ。
藤波様の手までわずらわせて。
うなだれたままの僕に
「少し話があるんだが、いいか?」
藤波様はそう言って立ち上がった。
「はい」と力無い僕の返事を確認すると
「部屋で待っているから来なさい」
言い残して去って行った。