優しい涙
第三章
藤波様に呼ばれた僕は、大急ぎで着替えを済ませ藤波様の部屋に向かった。


土まみれの格好では失礼だ。


僕は藤波様の部屋が好きだ。

扉を開けると一見、普通の応接間だが、隣の部屋には書斎があり本がたくさんある。


本が好きな藤波様はこの部屋でたいていの用が済むように、寝室や台所まで作り、何日もここで過ごすことがある。


以前

『内緒にしてくれよ』
と言いながら、僕に部屋を案内してくれたことがある。


書斎から天井に穴を開け、屋根裏部屋を作ったり、部屋から直接外へ抜け出せる秘密の通路まで自分で作ったらしい。


秘密基地みたいでわくわくする。


いたずらっこみたいな顔をして嬉しそうに話す藤波様を見ているのも楽しい。


コンコン。


今日は何の用事かな。

また新しい本を見せてくれるのかな。


僕は緊張と期待でドキドキしながら、藤波様の部屋をノックした。


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