優しい涙
「すみません…」


ようやく出た僕の言葉に、藤波様は軽く微笑んだ。


僕が藤波様に言える言葉は、いつもこれしかない。


何でもかんでも、謝ればいいなんて思ったことはないけど。


藤波様の役に立てないばかりか、迷惑をかけっぱなしの自分が情けない。


みじめな存在が申し訳なくなる。


「おまえは、優しいこだね」


優しいのは藤波様だ。


こんな僕なのに責めないどころか、いつも優しいこだとか一生懸命だとか褒めてくれる。


「おまえが優しいこだとわかっただけでも、私はおまえを雇ったかいがあるよ」



藤波様の情け深い言葉に、僕は自分のいたらなさを、よりいっそう噛みしめた。


「ところで、おまえは、何かしたいことがあるか?」


「え?」


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