優しい涙
僕は縁側に座り、広い庭をぼーっと眺めた。


「広いなぁ…」


この藤波邸の中庭は、とてつもなく広い。

確かに屋敷の中にあるはずなのに、景色を見渡せば、森の中にいるような錯覚に陥る。


一度、迷い込んだら簡単には出られない広さだ。


天下に名だたる藤波財閥の、それも本家の屋敷なのだから当たり前だ。
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