優しい涙
「おい、大丈夫か!?」


土蔵の扉が開く重い音がした。


僕はまだぼんやりしながら扉の方に目を向けた。


外はすでに夜のはずだが、それでもたくさんの照明で土蔵より明るい屋敷から光りが差し込んできた。


ずっと土蔵の暗闇にいたせいで、僕は目をくらませた。


それでも光の中央から藤波様が駆けてくるのがわかる。


夢…かな…


夢じゃなかったら嬉しいのに



でも…夢でも嬉しいや…



せめぎあう現実と空想にうつろな目をしていると、藤波様は僕のとなりに膝をつき


「傷だらけじゃないか」


僕の顔や腕に触れ、まるで自分が傷ついたように痛々しい表情をした。


夢じゃない…!


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