優しい涙
自分の身の上にふりかかったこと、これまでの経緯を考えれば、恐怖がよみがえってくる。



でも、さっきのように取り乱すような衝動は起きない。


意外に落ち着いている自分がいる。



目の前の藤波様が心配そうな顔をしているからだ。


僕の傷の具合を確かめながら、時々頭をなで、僕にかける言葉を探している。



それだけで、僕の心は満たされたんだと思う。


これからの自分なんてどうだっていい。


早く藤波様を安心させてあげたい。


僕は口角をあげ、出来るだけ笑い顔に近い表情を作ってみせた。

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